土の笛

土の笛

鳩笛をはじめとする土の笛の多くは シンプルなもので
派手さはありませんが その素朴な音色と温かみで愛されてきました
信仰的な面もあり かつては全国各地でたくさん制作され
古く 江戸時代より子供達の遊び道具として
また まじないや 信仰 みやげ物など さまざまな形で
全国各地 市井のなかで 親しまれてきました
鳩は平和や希望の象徴として 広く愛される存在ですが
日本では 八幡宮の神様のお使いとして 古くより信仰されてきました
さらに虫封じ・咽喉つまり除けなどの俗信を伴うとともに
その笛の音と愛らしさで 玩具として子供たちに買い与えられました
現代ではあまり見かけなくなり いささか寂しい気持ちが募ります
鳩笛を中心に 土の笛を並べてみました ご覧ください 

 

 

 

下川原(したがわら)土人形 青森県弘前市

 青森県弘前市桔梗野 
かつてこの地域を下川原とよんだので 
この名前が有ります
前(表)型と後(裏)型をあわせて作る 
土人形ならではの空洞を利用して作られ
下部に吹き口がつけられています
江戸時代より子供達に親しまれて
土人形を小さくした物や 動物が多く作られました
鳩笛は その代表といえるもので 
古くから小さい子供の虫封じに効くといわれました

 

*鳩笛 

 東北を代表する鳩笛で
 北国調の白灰色に濃紫色を中心に彩色
 かつては 子供の虫封じに効くと俗信が寄せられ 
 江戸時代から親しまれているものです

 

*櫂持ちうさぎ笛

 下川原の動物笛の代表作といえるもので
 昔話の「カチカチ山」の説話から題材を得た 
 舟の櫂を持ったうさぎの土笛です

 

*人面笛

 鬼でしょうか 明王でしょうか
 首の部分が吹き口になっています
 何か逸話等ありそうな気がするのですが判りません
 珍しいのかもしれません
 

 

水原(すいばら)土人形 新潟県北蒲原郡水原町

*鳩笛 

 原色を多用せず 白色を加えた淡彩色
 丸みを帯びた明るい作風が特色です
 この鳩笛は 首が青く塗られていますが
 塗られていないものと組物になるようです


塩山の鳩笛 山梨県塩山市

 

*鳩笛 

 江戸時代天保年間江戸の八丁堀で 鳩笛を作っていた陶工が
 この地に移り作り始めたといわれています
 翼に白梅の文様で 暗緑色または褐色など様々で風雅なもので
 鳩笛は 塩山に始まり 塩山に終わるといわれました
 昭和初期に姿を消しましたが 戦後復活されたものです

愛知県

 

 鳳来山のみみずく笛 

 

豊橋土人形 愛知県豊橋市

*鳩笛

 名古屋の鳩笛の影響を強く受けたもので
オレンジ色の頭部と胴・羽を 緑青黄等で塗り分け
メリハリの利いた くっきりとした彩色です
西村さん 親子の作品です

乙川土人形 愛知県半田市

 鳩笛

インコの様な外観で
 羽根の模様が細かく刻まれています 
 約12センチの長さで 大ぶりです 


名古屋土人形の土笛 愛知県名古屋市

全国の土笛の中でも 弘前 福岡と並び
笛の種類の多さに驚かされます
制作者 野田末吉の創作意欲とその技術で 
戦前からのものを多数復元し
他の産地の型を取り入れたりして 幅広く玩具作りをされ
新たに創作したものも含め 多くの作品が作られました

*鳩笛

子供の虫封じのまじないや
 胸に食を痞えさせないなどという
 信仰や伝承が多くあり
 多数作られたものです 


*鳩笛 

 豊橋のものと酷似していますが
 背の部分の彩色が若干違います
 あいまいな記憶なのですが 野田家でいただいた覚えです
 著名な方のオークションで 同じものが
 名古屋の鳩笛として出品されていましたので 
 名古屋の鳩笛としておきます

 

*梟笛

 

*鯱笛 

 昭和6年 名古屋城が名古屋市に下賜され
 市民に公開された記念に製作されたもので
 戦後復元されたものです


*蝉笛 

妻が 岐阜県白鳥の日本土鈴館で見つけました
 その場に居合わせた 趣味家のT氏に
 地団駄をを踏ませた記念の逸品です(笑)


*蝙蝠笛 

郷土玩具の収集家として有名な
 四日市市の伊藤蝠堂氏邸訪問記念品
 頒布用に製作されたもので 
 雅号よりコウモリの形となっています
 画像の作品は 昭和60年に復元され
 野田さん亡き後
 大津の中野和彦氏により あらためて制作されたものです

日牟礼八幡宮 滋賀県近江八幡市

 鳩笛 

新しい鳩笛で この中に加えるにはいささか躊躇をしたのですが
 員数合わせということでお許しください
 吹き口を何とかしてくれれば恰好がつくのですが… 残念です

下関のふく笛 山口県下関市

 

*ふく笛 

 関門名物の河豚を形どったもので メリハリの効いた白黒の彩色で
 昭和初年に製作され 戦後ユーモラスな形・デザインで人気を博し
 昭和35年のベルギー世界博覧会で銅賞を受賞しています


山口県

 

 鳩笛

山口県観光連盟推奨
 のシールが張ってありますが
 製作地 作者は不明です
 野暮ったい感じもするのですが
 淡い茶系の地に 
 赤 青 黄の色で丸が描かれていて
 何とも素朴な感じがして好きです

古博多土人形 福岡県春日市

 

*鶏笛

土俗的な玩具の制作を守りつづけてきた土人形です
 古来の製法を受け継がれたもので
 上品な作風に仕上げられています(中ノ子勝美作)

 

津屋崎土人形 福岡県福津市津屋崎

 

*鳩笛(筥崎宮) 

 丸く作られ  かわいらしさを強調しています
 背中に筥崎宮の三つ巴の紋があります(原田タカヨ)

 

*鳩笛 

筥崎宮のものをもう一回り小さくしたサイズで
 淡い彩色で優しさが感じられます(原田タカヨ)
 絵付けがいまいちなのが残念です

 

*鳩笛 

内部に土玉が入っており 振るとカラカラと音がします
 胸が大きく独特の形です(原田三右衛門)

 

*鳩笛(宇佐八幡宮) 

頭部を横向きにし
 目とくちばし 尾を朱で彩色した清楚な鳩笛です
 かつて子供の咽喉つまりの除けの呪いとされたそうです
 子の鳩笛には 宇佐神宮の刻印は付いていません

 

*羊笛 

動物の笛は珍しいと思いますが
 自分の干支でもあり
 干支としてもあまり人気のない羊の土笛ですので
 愛着はひとしおです
 

 

*もま笛 

 江戸時代安永の頃 火鉢や雑器を焼く傍ら
 手すさびに土人形を作り始めたと云われ
 古い博多人形の面影を伝えています
 子供の虫封じや 食事の際 
 喉に詰らないといった信仰で親しまれています
                       (原田誠)

赤坂土人形 福岡県筑後市

 

*梟笛 

粗い下地に 胡粉をかけ 赤・黄・緑などの色を
 刷毛で無造作に彩色しただけのもので
 大ざっぱともいえるやり方が持ち味で
 野趣を感じさせます

 

*犬笛 

 赤坂の土笛は かつては行商人により
 「ててっぽっぽ」といわれ売られたようですが 
 吹き口を尾に仕立てた造りで 表情豊かに作られてあります

 

*兵隊笛 

 戦前までの軍国主義の国体に合わせ作られたもので
 兵隊さんに対する親しみを込めて作られたものです

 

*鶏笛

 藤枝博物館発行の「鳩笛」で紹介されている
 101 尾崎のにわとり笛に酷似していますが
 これは 赤坂です
 近い地域ですので
 似たような形のものが作られたと思います

弓野土人形  佐賀県武雄市

 

*鳩笛 

 明治15年博多の人形師が
 移住して始まったといわれています
 鮮やかにくっきりとした彩色で
 目が描かれていないのが特色です


 

*鳩笛 

後年のもので 目が描かれ
 淡青色を基調の彩色で
 かつてのものとはまったく 異なっています

尾崎土人形 佐賀県神埼郡

尾崎土人形は 鎌倉時代 元寇の役で
捕虜になった中国人が伝えたという古い窯業地で
瓦や鉢などを焼く傍ら 人形が製作されました
福岡の赤坂土人形に似た素朴な作品が多く
素焼きに 胡粉を塗り 赤 緑 青 黒などで淡く彩色されています

現在は 柳川に移られた伊東家と 神崎町の八谷家で製作されています

 何ともいえぬ鳩笛の表情に どこかほっとした空気が漂うようです

 

*鳩笛

 

  黄色と青色の淡い彩色で 
 土俗的では ないものの
 シンプルで簡素な作りです 
   
扁平な鳩笛↑
 背面に 尾崎土人形 八谷至大と記されています
 ↓羽までリアルな鳩笛
   

 

* 小さな鳩笛

4×6
 笛口部に 尾崎人形の印刻がありますが
 どちらで製作されたものかはわかりません


 

*人形(軍人)笛 

赤坂のものと同様で
 その時代を感じさせる風俗人形です 

 

*人形(相撲取り)笛 

小さいながらも 力強い
 関取の気迫あふれる表情です 

 

*パラソル抱き(子守) 

こちらの子守笛は
 なぜかパラソルを持っています
 なぜ 子守と パラソルなのか
 勉強不足でわかりません
 ご存じの方 お知らせくださいませ 
 
 

 

*軍配持ち 


軍配を抱き抱えた童子の意匠で
 軍配の柄を吹き口にした 
 すぐれたアイデアです

 
 

大分宇佐八幡宮の鳩笛

 

*鳩笛(宇佐八幡宮) 

頭部を横向きにし
 目とくちばし 尾を朱で彩色した清楚な鳩笛です
 かつて子供の咽喉つまりの除けの呪いとされたそうです
 子の鳩笛には 宇佐神宮の刻印は付いていません

 

*鳩笛

淡い彩色で 羽根などが描きこまれています
 誤って落として破損したのですが 
 貼りつけたところ 立派に音は鳴ります 
 反省です


鹿児島神宮の鳩笛

 

*鳩笛 

かつては国分八幡宮と呼ばれた同社で 
 国分八幡宮の神鳩として
 古くより知られていたもので
 古いものは手ひねりで
 作られたものだったそうてすが
 現在は型抜きで作られ
 彩色もかなり変わってきているようです 
 

 

 

郷土玩具の部屋へ戻る