伏見人形

土人形の源流をなす伏見人形は
その古い歴史と伝統、そして土地柄、
垢抜けして洗練された作風の中にも庶民の心をひきつける素朴さをなくさず
その夥しい種類、かつての膨大な生産量、全国的な販路を誇ったことなど、
まことに土人形中の圧巻である
しかし 残念なことに 目下、この伏見人形がいつ発生したのか
その明確な時期など諸説があるものの、
いずれも明確な資料を欠いているのである
かつてこの伏見人形が集中的に生産された伏見稲荷大社の門前である深草一帯は
古来、土師部が住みつき、盛んに土器作りを行ってきたことは、
多くの資料によって実証されている。
そしてそれが後世までも「深草の土器」として名産の一にもなっていて、
この土師の伝統が無関係とは思えない
江戸初期までは、いわゆる土人形らしきものは登場しないが
当然かかる技術はすでにあったと思われる
その後、貞享・元禄の頃(1684〜1704)になると
さまざまな土人形が文献に頻出してくる
その後、幕末、化政期(1804〜30)頃にもなるとその盛時を迎え
五十軒をこす人形屋が軒を連ねていたという
その後盛大を極めた伏見人形も.時代の推移には抗しきれず
庶民信仰の変化・生活環境の近代化・新しい素材による新興玩具の登場などによって
この人形への関心が薄らぐと共に、明治20年代を境に衰退の一途をたどるのである
現在 製作を続けているのは 丹嘉 と 菱屋だけである

俵有作 編   日本の土人形(文化出版局)を参考にしました

代表的な伏見人形

饅頭喰い・・・・・・・・・・
  子供が二つに割った饅頭を両手に持った立像
  「父母のいずれが好きか」と問われた際 
  その童子が饅頭を二つに割ってどちらが美味しいかと
  反問したという教訓話に取材したもの
布袋・・・・・・・・・・・
  家内和合・福徳円満・息災延命のお守り
  初午の時に小型のものを一体買い求めて荒神棚に供え
  七つ布袋と称して(9体・13体の場合もある)
  七年間毎年一体ずつ次第に大型のものを並べる風習がある
狐・・・・・・・・・・・
  稲荷の神使いとして 各種作られた
  稲荷の神棚に左右一対とし祀るものが主であるが
  神狐・馬乗り狐・千両箱持ち・口入れ狐・御幣持ち など種類は多い
でんぼ・・・・・・・・・・・
  素焼きの皿を大中小三枚重ねにしたもの縁を赤・緑・群青などで色付けしてある
  伏見人形の中では初期に製作されたものの一つ
  餅あられ煎り豆・種物などを入れて仏前や神前に供えた
  伏見人形が古代の土器作りから発達をした名残りを示している
西行・・・・・・・・・・・・・
  歌僧西行法師が風呂敷を背負い
  岩に腰掛けて富士を眺めている姿を人形化したもので「富士見西行」と呼ばれる
  金を貯めるものは たとえ人形の首が落ちても
  風呂敷包みは放さぬという笑い話があり盗難除けになるという
成田屋人形・・・・・・・・・・・・
  歌舞伎十八番物の「矢の根」「暫」「助六」の三種が一組となっている
  伏見人形はその形が壊れたものは稲荷山の土に還るといわれがあり
  七代目市川団十郎が江戸帰参がかなった意味から作らせたのが起こりとされている
友引人形・・・・・・・・・・・
  五人の子供が縦に並んだ形に作り「五人子友好行」ともいわれる
  一種の埋葬人形で 事に子供の葬式の時などには これが添えられた
  現在ではこの風習も廃れ ほとんど姿を消している
ちょろけん・・・・・・・・・・・・・・・
京の町に毎年正月登場した物貰い「ちょろ」の門付け風俗を模したもの
長老君の転訛した物で  正月門付中では第一等の人気者であった
お福ちょろ・徳助ちょろ・猿(去る)ちょろ・馬ちょろなどがある
米倉・・・・・・・・・・・・・・・
一つ蔵、二つ蔵、三つ蔵などがある 他に蔵の横に米俵を積んだものなどもあり
貯金入れになっている
飾り馬・・・・・・・・・・・・・・・
干支の中でも 馬は特に 運搬 移動など生活に直結する動物なので
郷土玩具の中でも数多く制作されています
この飾り馬は 昭和の初めころのものと思います
牛・・・・・・・・・・・・・・
大小さまざまな種類があり 撫牛(出世)・幸右衛門型小牛(一文牛・疱瘡よけ)
俵牛(豊作) 他 牛車・臥牛・天神乗り牛など
金太郎・・・・・・・
天神・雛・飾り馬・熊金・鎧武者・桃太郎などの節句物の一つ
強健な子供の象徴として親しまれ 端午節句人形として飾られるようになった
子供が丈夫に育つようにという願いと 立身出世を祈る親心が込められている
泥面子・・・・・
江戸時代よりある子供のおもちゃです 『面打ち』『面形』ともよばれました
この面子は 丹嘉製で歌舞伎 恵比寿 大黒や唐子 鬼 ひょっとこ 狐等々
様々な登場人物があり 非常に興味深いものです
雪舟寺の鶴亀
東福寺の山内 芬陀.院雪舟寺で授与された鶴と亀
雪舟寺境内の庭園は 室町時代雪舟の作で 鶴亀の蓬莱庭として有名である
作られた当時 毎夜異様な物音がするので 住職が覗くと月明に石組みの亀が動いたとの話があり
蓬莱の瑞祥に因んで土焼の一対が作られたといわれる
その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
土鈴(虫除け)・土鳩(虫きり)・叶福助(商売繁盛)などの縁起物
勧進帳・忠臣蔵・曽我対面・八重垣姫などの歌舞伎狂言物
犬・猪・猿・十二支物などの動物類
つぼつぼ・釜釜・竈・徳利・鉢・土瓶など女の子の飯事遊び道具
明治期の蒸気船を模したものなどがある


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