2007/6/11
名古屋土人形の作者 野田末吉さんが亡くなられて はや20年近い年月が流れました
膨大な種類の数多くの土人形を生み出した
師の新しいものを作り上げる 旺盛な意欲と熱意 そして愛情が土人形の源と思います
師の残さされた人形達は今も沢山の人々に愛でられ続けています
その人形たちを形作った型は一体どうなっているのでしょう
土人形が作られなくなって20年余り
型はひたすら新たな命を吹き込まれるのを待ち続けているようにも思えます
野田さんの型に関して 少しばかりお話を伺ったのですが
現在のままでは このまま 朽ち果てていくようにも思われ
なんとも不憫で悲しくも感じてしまいます
その昔は 三河の土人形や 犬山 尾北では型の貸し借りが頻繁に行われていたそうです
名古屋 | 棚尾 |
棚尾の花魁と 名古屋の花魁を 並べて鑑賞する機会に恵まれました
同じ型を使ったものでも はっきり棚尾と名古屋の それぞれの個性が光っていました
どのような経緯で野田さんの元へ その花魁の型が渡ったのかは判りませんが
棚尾の花魁も 最終的には名古屋の野田さんの所に安楽の地を見つけたのかもしれません
その貸し借りが良い悪いという事ではなく 土人形を愛でる者にとって
色々な作者の人形が 一つの型で個性として現れ
愛されていくのは実に素晴らしい事だと思います
またそれを比べて眺めてみるのも 作者それぞれを思われて 楽しく感じられます
各産地の個性や伝統 引き継いできた特色を殺すような事になってはいけませんが
個性のある製作者達が それぞれの型を融通しあって
競作しあうのも 土人形の世界では よいことかもしれません
そんな折ひょんなことで野田さんの型を見せていただく機会に恵まれました
そこで ふと 困ったアイデアが頭をもたげました・・・
反対意見も有るかもしれないと思いつつ 三河旭土人形の高山さんに
野田さんの型で土人形を作っていただけないかという事で
何人かの方々に相談の上
高山さんなら 作風を真似るとか 似せるということを 出来る方ではないので
あくまでも名古屋の型で 旭土人形の高山八郎の土人形が
出来るのではないかと了承していただき
高山さんにその製作を依頼しました
その出来上がりを見ると 何と言うことでしょう!! 見事に三河旭の土人形です 高山さんの素敵な土人形が出来上がっていました 高山さんも 興味しんしんで いろんなものを作ってみたいという制作意欲に駆られたようです 『また変わったものがあったら造らせてよ』と リクエストまで頂いてしまい 冷や汗物です(笑) 高山さん自体 かつて自分が゛手がけた事のない型から 新たな人形を創造する事が楽しそうです 野田さんの型が生かされ 新たな命が誕生した思いです |
そして 大浜土人形の禰宜田さんも 野田さんの型について興味を覚えられ 『野田さんの型は 三河のものと違い 硬く焼き〆られていて とても素晴らしい立派な型ですね 型という物は 永年使わないでいると自然と悪くなるので 時々は 型にも呼吸させてあげた方が 良いのではないでしょうか・・』 と 作ってみたいという お申し出をいただきました その出来上がりも 丁寧かつ大浜の独自のものです 野田さんの人形を見られたことはなく あくまでも 土人形の製作者として 良い型にめぐり合えたので是非挑戦したいという 探究心と熱心さの賜物です |
並べてみると
名古屋の繊細さ 旭の明るさ・大らかさ 大浜の迫力・存在感
どれもその産地・製作者の特徴が表れています
招き猫(大・小) | ||
三河の型に比べると少しスリムです ダイエットしたって感じですが 高山さんの旭の猫そのものです |
||
旭の高山さんに 大小2匹 何時もの白黒柄と 虎猫仕様 |
||
袴猫 旭 袴猫も なんとも言いがたい味になりました 住吉の初辰の猫に似ているような・・(笑) |
||
饅頭喰い 旭の子は 少しすまし顔 |
||
大浜の饅頭喰いは まぶたが特徴的です | ||
栄国寺の寝牛 旭 同じ真っ黒黒助でも 色調の違いがよく判ります |
||
猪 旭 猪 なんともひょうきんそうな・・・ |
||
新田四郎 左 旭 右 大浜 |
||
牛若丸 名古屋のものも 本来は組み物だったかも知れないと お聞きしたので 高山さんに オリジナルの弁慶を作ってもらいました 想像すると楽しいものがあります |
||
馬乗り袴狐 旭 色彩豊な明るい旭の特色が出ています |
||
春駒抱き子供 旭 頭がおかっぱで なんともいえず楽しいです |
||
寅 旭 優しげな虎さんです |
||
兎宝船 なんと鶴さんが 青くなってしまいました 製作中 なんだかわからなくて 高山さんは(旭) 宝物の一部と 勘違いしてしまったようです(笑) |
贋作騒ぎなどが起きたのでは困ります
もう手に入らない品物を
真似て作るような悪意に満ちた行為はとんでもないことだと思いますが
残された型を生かしていくという言い訳で
困った趣味のお遊びとしてお許しくださいませ
土鈴館友の会の20周年の記念に 館長さんが 名古屋土人形の 『兎の持ちつき土鈴』を
滋賀の中野和彦さんに依頼し かつての名古屋土鈴を彷彿とさせる土鈴を製作されました
野田さん独自の色合いを再現するのに苦労されたそうです
名古屋土人形よもやま話
壱 弐 参 四 五 六
郷土玩具の部屋へ戻る